最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)1002号 判決 1959年6月26日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
本件上告理由は別紙のとおりである。
上告理由第一点について。
論旨は、原判決は公職選挙法三四条六項五号の「七日前」の解釈を誤つた違法があるというのである。
原判決の確定するところによれば、本件選挙の期日は昭和三三年一月一三日であり、選挙期日の告示は同月六日に行われているのである。公職選挙法三四条六項五号の「少くとも七日前に」の意味は、選挙期日の前日を第一日として逆算して七日目に当る以前を指すものと解すべく、原判決の解釈も結局これと同趣旨に帰し、本件選挙期日の告示に違法がないとしたのは正当であつて論旨は理由がない。論旨は、株主総会招集通知に関する大審院の判例を援用するのであるが、選挙期日の告示とは場合を異にしただちにこれを先例とすることはできない。
同第二点について。
論旨は、選挙管理委員及び同補充員については、その職務の性質上、指名推薦の方法によつて選任することを許さない旨を主張するのであるが、地方自治法一一八条は、広く議会において行う選挙について指名推薦の方法を用いることができる旨を規定しているのであつて、選挙管理委員及び同補充員なるが故に指名推薦による選任を違法とすべき理由はない。論旨はまた、右選挙管理委員等の選任は、議会会議規則に反し、会議延長の議決をしないで午後五時過ぎ行われた違法がある旨を主張するのであるが、右選任が午後五時以後に行われた事実は原判決の認定していないところである。論旨はさらに、選挙管理委員会委員長に選任された根本亮は地方教育公務員であつて、その就任について許可を受けていないから右根本の関与した本件選挙は無効である旨を主張するのであるが、所論のように許可を受けなかつたことによつて、地方公務員法に違反し、同法上の責任を負うことがあるのは格別、ためにその就任を無効と解し、同人の関与した本件選挙を無効と解すべき理由はない。論旨は理由がない。
同第三点について。
論旨は、原判決が選挙管理委員選任を取り消す旨の議会の議決は知事の裁定によつて取り消されたから、取消議決のあつたことは結論に影響がない旨を判示したのを非難するのである。
しかし、知事の裁定によつて取消議決が取り消された以上、取消議決はなかつたことに帰するのであつて、当初の選任議決に何等影響のないことは原判示のとおりである。論旨は村長の当選無効、議会の構成の不適法を理由に裁定の無効を主張するのであるが、所論のように村長の当選を無効と解すべき理由もなく、議会の構成を不適法とする根拠もなく、論旨は理由がない。
なお、上告理由書提出期間経過後提出された申立書については判断を加えない。
以上説明のように本件上告は理由がないから、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)